剣道は安全?危険?
剣道は日本刀を模した木刀や竹刀を使うため、危険であると思われがちです。実際はどうなのでしょうか?
興味深い統計データがありましたので紹介させていただきます。
以下に挙げるデータは、名古屋大学大学院教育発達科学研究科の内田良准教授が主宰する、学校リスク研究所(http://www.dadala.net/index.html)に公開されているものを引用させていただきました。
1.剣道で死亡事故ってあるの?
下表は2001-2010年度までの10年間における、中学校主要部活動の、運動や試合等の行為を直接要因とする死亡事故発生率を示しています。これによると剣道での死亡率は0%で、他の主要な部活動で死亡事故が発生しているのに対し、剣道は発生していません。よく比較される柔道の死亡事故発生率は、10万人あたり2.5件と群を抜いて高く、先に紹介した内田准教授の集計では、発生事故件数は1983年から2010年までの28年間に118件となっており、年平均4.2件発生しています。同じ武道でも、剣道と柔道とでは、大きな違いがあります。
2.剣道での負傷事故ってどのくらいあるの?
下表は2007年度における中学校主要部活動の負傷事故発生件数です(表中の「支給件数」は、傷害保険の支給件数を示しており、報告された発生件数とほぼ同意と考えて良いと思います)。
剣道の傷害発生率は、重度傷害は主要14部活動中10位、軽度傷害は9位と、どちらも低位になっています。格闘技の割には事故件数は少ないと言えます。
3.熱中症事故はありそうだけど、どうなの?
剣道で気をつけなければいけないのは、夏場の熱中症です。
1991-2010年度の20年間の、100万人あたりの熱中症での部活動別の死亡率は下表の通りです。
剣道の熱中症事故の割合は柔道に次いで高く、100万人あたり1.5人強となっています。このことから、夏場の稽古においては、熱中症には十分気をつける必要があることがわかります。
以上の統計データから、剣道は重大事故の発生割合は低く、主要スポーツの中でも比較的安全を確保し易いものであると言えると思います。
とはいえ、事故がまったくないわけではありません。
竹刀の手入れを徹底し、割れた竹刀やささくれによる事故を防ぐこと、竹刀や木刀を振るときに周りに気を配り、失明等の事故を起こさないようにすること、柔軟体操などの準備運動を行い、アキレス腱断裂といった事故が起きないようにすること、そして夏場の熱中症対策を怠らないことを、しっかり頭に入れておいていただければと思います。