剣道用語集
[あ]歩み足
あゆみ-あし
平常の歩行のように、右足、左足を交互に動かして進んだり、退いたりする足さばきです。切り返しの受け手が前後に動くときの足さばきでもあります。
遠い間合いから技を出す時などにも用いることがあります。
[い]一刀流
いっ-とう-りゅう
戦国時代末期に鐘捲流(かねまきりゅう)の流れを汲む伊藤一刀斎によって創始された剣術の流儀です。
二刀流に対しての呼称でも、一刀斎の名前から取ったものでもなく、一心一刀で信念の一刀に生命をかける精神と、「一刀万刀に変じ、万刀一刀に帰す」という根本理念から命名されたと言われています。
一刀流流派としては、北辰一刀流が有名です。
[い]一眼二足三胆四力
いち-がん-に-そく-さん-たん-し-りき
剣道には、第一に相手を見る洞察力、第二に足さばき、第三に何事にも動じない強い気持ちや決断力、第四に技を発揮する身体能力が必要である、ということを説いた言葉です。
[い]一足一刀の間合い
いっ-そく-いっ-とう-の-ま-あい
右足の踏み込み1歩だけで、相手を打突できる距離のことを指します。一足一刀の間合いからは、素速く竹刀を振り上げ、右足を上げて1歩で踏み込んで打突することで、速い動作での打突ができるようになります。
小学生では、左足を少し動かして右足で踏み込める状態を作るといった、余計な動作が入る人が多いのですが、これでは一足一刀にはなりません。この癖を直すための指導は、毎回の稽古の中で徹底して行っていきます。
[う]打ち落とし技
うち-おとし-わざ
相手が構えていたり打ち込んでくる竹刀を右下、あるいは左下に打ち落として、直ちに打つ技です。相手の打込みを打ち落とすタイミングの取り方が非常に難しいですが、相手の打突の起こりをよく捉えることができれば、動作自体は比較的自然にできる技であると言えます。
打ち落とし技には「面打ち落とし面」、「胴打ち落とし面」、「小手打ち落とし面」、「突き打ち落とし面」、「胴打ち落とし胴」などがあります。
構えている竹刀の打ち落としは、自分の構えよりも相手が低く構えている場合に有効です。
[う]打ち込み稽古
うち-こみ-げい-こ
指導者(元立ち)の与える打突の機会を捉えて打ち込んで、打突の基本的な技術を体得させる稽古法です。通常、元立ちが「面」、「小手」など、打ち込む部位を指示しながら行います。
[う]打太刀
うち-たち
剣道形を行うとき、師の位にあって常に技を仕掛ける人のことを指します。
剣道形においては、打太刀の技量が勝っていることが全体の流れをうまく進める上で重要であるため、通常こちらを師の位の人が行います。
[え]遠山の目付
えん-ざん-の-め-つけ
遠い山を見るように、相手全体を見るようすることを指します。
面、小手、胴といった打突部に目をやると、相手に心の動きを読まれてしまいます。相手の目を見てそらさず、相手全体を見るようにすることで、相手に自分の心を読まれにくくするだけでなく、余裕をもって構えることができます。
また、相手がどのように動いても 自分の心は動かされることなく、かえって相手の動きをよくつかむことができます。
[か]掛かり稽古
かかり-げい-こ
元立ちに対して、短時間に気力を充実させ、体力の続く限り全身を使って、元立ちの隙を捉えて間断なく打ち込んでいく稽古法です。元立ちは掛り手側が打ちやすいように隙を作りますが、一方、気力がない打ちや、弱い打ちに対しては応じたり返したりすることで、掛り手がしっかりと打ち込まねば、自分がやられることも覚えさせます。
元立ちも掛り手と同じようにどんどん打ち込んでいく、「相掛り(あいがかり)稽古」というのもあります。
[か]観見の目付
かん-けん-の-め-つけ
相手全体の姿を見つめて一部の動きにとらわれず、心の動きまで見つめるような目の付け方のことを言います。「観」とは心の中を捉える洞察力のことを、「見」とは物理的に動きを捕らえる目のことを指します。
相手の目を見てその心の中を探り、相手の目を見つつも、身体全体を視野に入れて物理的な相手の動きを捕らえるようにすることが大事であるということです。
[か]返し技
かえし-わざ
打ち込んでくる相手の竹刀を受け、またはすりあげるようにして応じ、体勢の崩れるところをすかさず打つ技です。応じた反対側に竹刀を返し、返す力を利用して打ちます。
返し技には「面返し面」、「面返し胴」、「面返し小手」、「小手返し面」、「小手返し小手」、「胴返し面」などがあります。
[か]鈎足
かぎ-あし
竹刀や木刀を構えたとき、後ろ足が正面に向かず左に開いている状態のことを指します。
しっかりとした踏み込みや、速やかな前進後退を妨げる足構えですので、矯正をしていく必要があります。
[き]切り返し
きり-かえし
正面打ちと連続左右面打ちを組み合わせた、剣道の基本的動作の総合的な稽古法です。
この稽古のなかで、
* 正しい構え・姿勢
* 正しい刃筋や手の内での打突
* 正しい足さばき
* 相手との間合いの取り方
* 呼吸法
を身につけていきます。さらに、強靭な体力や旺盛な気力などを養い、「気剣体一致の打突」を習得することをねらいとしています。
また、悪癖の矯正や予防、準備運動や整理運動としても重要な役割を果たしています。
切り返しは以下の手順で行います。
正面打ち・体当たり→連続左右面(相手左面から開始し、前進4本、後退5本)→間合いを作り正面打ち・体当たり→連続左右面→間合いを作り正面打ちし、抜ける→残心
[き]教士
きょう-し
段位とは別に、指導力や識見、人格などを備えた、剣道人としての完成度を示すものとして、七段以上の受有者に授与される称号です。
受審資格は「錬士七段受有者で、七段受有後、別に定める年限を経過し(現在2年)、加盟団体の選考を経て、加盟団体会長より推薦された者」と規定されています。
[き]気位
き-ぐらい
修養を積むことによって自然に備わる気品のことを指します。長年の修錬の結果にじみ出てくるもので、見る者にひしひしと伝わる充実した「気」を備え、品位を備えた堂々とした態度のことを「高い気位」と言います。
[き]気剣体一致
き-けん-たい-いっち
気勢、竹刀の動き、体の運びの3要素が一致して、初めて有効な打突となるということを表した言葉です。
試合規則の有効打突の条文にも、「充実した気勢、適法な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるもの」と、明記されています。