剣道は、右手右足を前にして構えるけど、決まりなの?
野球やゴルフには右打ち、左打ちがありますし、剣道と同じく剣を用いるフェンシングには、右構え、左構えがあります。
一方、剣道では中段の構えにおいて左手左足を前にした構えの人を見ることはなく、みな右手右足を前にした構えをしています。これは何かしらの決まりがあるからなのでしょうか?
1.左手左足前の構えはアリ?
実は全く問題ありません。
剣道において、左手左足前の構えは特に禁止されていません。実際にそれを示す規則が剣道試合審判細則規則にあります。同規則第13条を見てみましょう。
剣道試合審判細則規則第13条規則第14条(打突部位)は、第3図のとおりとし、面部および小手部は、 次のとおりとする。 1.面部のうち左右面は、こめかみ部以上。 2.小手部は、中段の構えの右小手(左手前の左小手)および 中段以外の構えなどのときの左小手または右小手。 |
上記第2項は、剣道の構えには「左手前」の構えがあり、その構えにおける左小手は有効打突になる、ということを示しています。
2.ではどうして、右手右足前の構えしか見ないの?
これには、いくつかの説があります。
(1)右利きが多く、右手を使って抜刀する方がやりやすかったから
(2)合戦や集団行動のときに、刀の携行のしかたや構え方を統一していた方が都合が良かったから
(3)昔の日本の往来は左側通行であり、刀がぶつからないようにするには左帯刀が合理的だったから
などといったものです。
右利きならば右手を使って抜刀し、右手前の構えにした方が合理的ですし、手の内を返したり絞ったりして刀を制御するにも、右手が前の方がやりやすいことは確かです。それに集団で行動することを考えると、刀の携行のしかたや構え方を統一することも、一理あります。昔の武士は左利きは幼児期に必ず右利きに矯正されたそうですが、構え方の統一という考えが強くあったことの裏付けと考えられなくもありません。
また、刀は左が表(差し表)と決まっており、鞘(さや)の装飾もそちらにしか入れないそうです。このことから、刀の右差しは基本的になく、古くから左差しが根付いていたことが窺えます。
以上のことを総合すると、上記に挙げた剣道試合審判細則規則での規定は、右手右足前の構えができない場合における、代替となる構えと有効打突の取り決めであり、単なる試合上の1ルールに過ぎないのではないかと思います。
だれも行っていない左手左足前の構えをすることは、試合において有利に働く可能性も若干はありますが、何につけても指導できる人がいないと思いますので、相当な冒険になりますね。