剣道用語集
[き]虚実
きょ-じつ
虚とは心身に隙の生じた状態のことで、実とは精神に気迫が充実していて油断がなく、注意の行届いている状態のことを言います。
たとえば、打突の好機のひとつである「技の起り頭」には、相手が打込もうとする充実した「実」の状態がある一方で、守りがおろそかになる「虚」が生じやすく、そこを逃さず打つということであり、出ばな小手や出ばな面は、懸かり口の虚に乗ずる技、ということができます。
[き]驚懼疑惑
きょう-く-ぎ-わく
相手と対峙したときに起こる心の動きを表した言葉で、驚いたり、擢(恐)れたり、疑ったり、惑ったりする心の状態を指します。四戒、四病とも言い、このような心の動揺をいかに制御するかが重要であるということを教えています。
■驚(おどろく)
突然の出来事に心が乱れて正常な判断ができない状態です。
■懼(おそれる)
恐怖心が起き、攻めようにも退こうにも、体が動かない状態です。
■疑(うたがう)
相手が何をするのか疑心暗鬼になり、敏速な判断、動作ができない状態です。
■惑(まどう)
精神が混乱して、敏速な判断、軽快な動作ができない状態です。
[く]組太刀稽古
くみ-たち-けい-こ
攻撃に対する受け方や返し方、間合いの取り方や詰め方を、太刀(木刀)を用いて打ち合うことで身に付ける稽古方法です。
現在の剣道では竹刀稽古と形稽古が中心であり、組太刀稽古はほとんど見かけませんが、古流剣術や合気道の稽古において見ることができます。
[け]下段の構え
げ-だん-の-かまえ
中段の構えから剣先を相手の膝頭あたりに下げた構えです。日本剣道形の下段の構えにおいては、剣先を膝頭の下3~6cmの高さにします。守りの構えと言われ、通常の試合などで使われることはほとんどありません。
[け]剣先
けん-せん
刀や竹刀の先端の部分を指します。切っ先(きっさき)と言う場合もあります。
剣先の位置はとても重要で、稽古の中でも最も注意されるところのひとつです。常に相手の正中線につけ、攻撃にも防御にも即応できるようにしておくことが大切です。
[け]剣心一如 / 剣心一致
けん-しん-いち-にょ / けん-しん-いっ-ち
幕末の直心影流剣豪・島田虎之助が説いたと言われる、「剣は心なり/ 心正しからざれば剣又正しからず/ 剣を学ばんと欲すれば/ 先ず心より学ぶべし」という教えのことを指します。
剣は心によって動くものであり、剣と心は一元的のものと言えます。従って正しい剣の修行をすれば、正しい心を磨く結果になるということです。
[け]剣道具
けん-どう-ぐ
面、小手、胴、垂の4点を一組とした、剣道の修練に必須となる、危険を防止したり打突部を保護したりするために身につける道具のことです。
これらを「防具」とも言いますが、剣道における正式名は「剣道具」です。
[け]剣道着
けん-どう-ぎ
剣道をするときに着る上衣(うわぎ)のことです。
よく胴着(どうぎ)と言う人がいますが、これは間違いです。薙刀(なぎなた)や柔道等、他の格闘技で上衣のことを胴着ということはありますが、剣道においては使いません。インターネット通販等でも、胴着という言葉を使っているサイトはほとんどありません。
[け]懸待一致
けん-たい-いっ-ち
攻防一致とも言い、「懸」は「かかり」、つまり打突していくこと、「待」は「まつ」、つまり応じることを指します。
攻撃と防御は表裏一体をなすもので、攻撃中も相手の反撃に備える気持ちを失わず、防御においても常に攻撃する気持ちでいることの大切さを説いています。
[こ]五行の構え
ご-ぎょう-の-かまえ
剣道で用いる五つの基本的な構え方のことです。中段(正眼)、上段、下段、八相、脇構えの五つを指します。
かつて真剣での勝負が行われていた頃にはそれぞれの構えが使われていましたが、現在の剣道では使う利点のない下段、八相、脇構えは形骸化し、実際に用いるのは中段と上段だけとなっています。なお下段、八相、脇構えは日本剣道形においてのみ、見ることができます。
[こ]交剣知愛
こう-けん-ち-あい
剣道を通じて互いに理解し合い、精進することを教えた言葉です。愛は「おしむ(惜別)」、「大切にして手離さない」ことを意味しています。剣を交えた人と、もう一度稽古や試合をしてみたいという気持ちになること、そうした気持ちになれるように毎回の稽古や試合を大切にしなさいということです。
「剣を交えて おしむを知る」とも読みます。
[こ]小手(打突)
こ-て
有効打突部のひとつです。小手は左右にありますが、通常、相手の右小手だけが有効打突とされます。
中段の構えでは右小手を正しく打てば一本ですが、左小手(=逆後手:ぎゃくごて)は一本としません。相手が上段に構えて左手が前になった時は、左小手も有効打突となります。これらはルールですので、覚えておくと良いでしょう。
[こ]小手(防具)
こ-て
両手にはめて使う防具で、稽古や試合において、相手の打突の衝撃や怪我から手を守ります。同時に有効打突である「小手」の部位でもあります。甲手、籠手とも書きます。
汗を吸うことで、臭いが強くなりますので、乾燥させたり除菌スプレーなどで消臭したりといった手入れを行います。あまりに臭いときは、型が崩れないようにしながら、丸洗いすることもあります(剣道具店では絶対に奨めませんが)。最近は丸洗いできる小手もあります。
[こ]後の先
ご-の-せん
相手が先をかけて打ち出してきたところを制する先のことです。たとえば、相手が面を打ち込んできたときにすり上げて面を打つとか、応じ返して胴を切るのが後の先です。「すり上げ技」、「返し技」、「打ち落とし技」などがあります。
待の先とも言います。
[こ]攻防一致
こう-ぼう-いっ-ち
懸待一致と同義で、相手を攻める中にも、相手の攻撃に備える気持ちを失わず、防御においても常に攻撃する気持ちでいることの大切さを説いた言葉です。
攻撃と防御は表裏一体を成すものであり、専ら攻めるだけ/防御するだけにならないように、備えを怠らないようにせよ、ということです。
[さ]三殺法
さん-さっ-ぽう
剣道では竹刀(刀)を殺し、技(業)を殺し、気を殺すことを三殺法(3つのくじき)と言います。
「竹刀を殺す」というのは、相手の竹刀を左右に押さえ、あるいは捲き払いなどをして竹刀の自由な動作、即ち剣先を殺すことを指します。
「技を殺す」というのは、先を取って間断なく攻め立て、相手に攻撃の機会を与えず、技を出させないようにすることを指します。
「気を殺す」というのは、絶えず全身に気をみなぎらせて、先(せん)の気をもって向かい、相手の技の起こり頭を押さえる気位を示したり、間合いを上手に取って相手の気をそらし、相手のひるむところを、すかさず気位を保って攻め立てることを指します。
[さ]先革
さき-がわ
竹刀の剣先をまとめるためについている革のこと。これが付いていることによって、竹刀がばらばらになるのを防ぎ、また突き技のときに相手を傷つけないようにしています。
先革の長さが短いと、打突の際に竹刀がしなったとき、しなりによって生じた長さの差によって竹が外れることがありますので、一定以上の長さが必要とされています。大学/一般の試合規定では、50mm以上となっています。
また、先革が回るほどゆるい竹刀は、試合ではチェックに通りません。
[さ]左座右起
さ-ざ-う-き
剣道で行う、正座する場合の座り方と立ち方の作法のことで、座るときは左側から、立つときは右側から行うことを示した言葉です。
座るときには、左足を一歩後ろに引き、床に左膝→右膝の順に膝をつき、つま先を伸ばして座ります。立つときは、両膝を床につけたまま腰を上げてつま先を立て、右足→左足の順に立ち上がります。